有料老人ホームでは、入居の際に入居一時金が必要となります。
入居一時金とは、契約方式を採用して利用権方式とした場合に、入居後一定期間の居住費を前もって支払うという特有なシステムであり、料金形態の一部となっています。
前払いのようなイメージでマンションでいう敷金のような感覚ですが、落とし穴もあるので注意が必要です。
要するに「入居一時金」=「家賃の前払い」のようなイメージです。
これは終身利用権の料金としての位置づけであり、その金額は0円~数千万円と施設によってかなり違っていたり、年齢による金額設定をしているところもあったりと、幅が広い設定となっています。
高級なホームでは億を超えるところもあると言われています。驚きですね。
ちなみに入居一時金のような前払金の調達法として多かった方法は、「預貯金」が79%、「自宅の売却」が 38%、「有価証券などの売却」が 22%というデータが出ています。(主なもの2つを選んでいる)※1
老人ホームにおける入居一時金の仕組みとは?
入居一時金を領収した有料老人ホームでは、「家賃(月額)×想定居住年数」を計算し、この想定居住年数を超えた場合(長生き)の入居者家賃分を上乗せし、これが入居一時金として算出される仕組みです。
ただし長生きすると金額がプラスされるわけではありません。
というのも、想定居住期間は日本人の平均余命を参考にして設定されていて、前もって領収した分が家賃として毎月償却されていきますが、入居者が長生きで想定居住年数(償却期間)を超えた場合でも、その後の入居費用は追加徴収はされません。
この場合の事業者は、償却期間終了以降の利益は出ないことになり、その穴埋めとして事前領収金の一定割合分は返却しないという初期償却が定着化しているためです。
基本的には、定められた償却期間が終了する前の退去については、未償却部分の返還という形になっており、20~30%を初期償却分として入居時に償却してその後の償却期間5~10年において均等割にて償却していくホームが多いです。
つまり、「入居一時金」=「家賃の前払い」のようなイメージなので想定よりも早く退去した場合には入居一時金が戻ってくるということです。
ポイントとして、退去までどれくらいその施設に住んだか、という居住期間(償却期間)次第で、最終的にいくら戻ってくるかが変わってくるわけです。
冒頭に紹介したようにマンションの敷金のように入居一時金が戻ってくると思っていて、意外と戻ってこなかったとトラブルになるケースもあるのでその点は注意が必要です。
また、契約から90日以内の契約解除の場合に全額返還されるというクーリングオフ制度も覚えておく必要があります。介護業界では「90日ルール」とも呼ばれています。
老人ホームにおける90日ルールとは?
「入居一時金」=「家賃の前払い」ということでしたが、入居契約後90日間の退去の場合には、クーリングオフ(契約解除)が設けられていて、90日以内の退去であれば、入居一時金が戻ってくるというものです。
2012年4月1日以前までは、努力義務のような形でしたが、それ以降は法制化されているため、入居後90日以内の退去であれば、一定の費用を除き返還されるように決まっているので、覚えておくといいでしょう。
入居一時金が高額な理由
ホームの利用権は「終身にわたる生活支援サービス(食事等)+居住費」というセットになっていて、入居時に事前に支払う費用が高額な分、要介護状態となった場合でもサービスは継続し安心した生活を送ることが保障されているのです。
この利用権方式システムは、最初にまとまった費用を支払うことにより、毎月の生活費は公的年金受領額範囲内で賄えるという、老後生活に安心を与えるものということで支持され続けています。
平成12年より導入された介護保険制度により、有料老人ホームへの入居対象者は要介護者も含まれるようになったことによってサービスの内容も介護部分が増えつつあります。
要介護者向けのホームは、40戸前後という小さな平均規模であり、その多くは地主がホームを建てて、それを企業が丸ごと借り上げるという事業方式「サブリース方式」となっています。
この場合、初期投資である建築費用が不要なため入居一時金の徴収も不要となり、月額家賃方式が増えてきています。
実際に支払い予定額を聞いたところ“自身の入居検討者”では、「0 円(前払金なし)」 は 22%。
前払金を支払う予定の人があげた 具体的金額はかなり分散しており、「3000 万円以 上」も 23%にのぼっていたとの調査があります。
また多かった金額は、1000~1500万円未満10.5%、2000~2500万円10.0%とのことでした。※1
参考になれば幸いです。